前田智洋 : Tomohiro Maeda

一杯の珈琲

一昨日の日曜日、初めて本厚木という駅で降りた。

本番の二週間程前にどうやって本厚木に行こうか考え、初めてのお店だったので自分の音作りがしやすいように、レンタカーを借りてアンプを持って行こうかと思っていた。久しぶりにゆっくりドライブしながら行くのも楽しそうだと思ったのだ。
しかしこの日は日曜日、しかもお盆休み中とあってどこのレンタカー会社も早々に予約で一杯だったらしく、車が借りれず、仕方なく思い荷物を抱えタクシーと電車を使い、1時間20分程かけて本厚木に辿り着いたのだ。

結果としてこの事が僕に新しい世界を見せてくれた。

ライブに来てくれていたとあるチリ人。彼はフランス語が話せるという事で紹介され、すぐにとても仲良くなった。
そしてライブ後も片付けまでずっと居残っていて、一緒に東京へ帰る事に。
そこで彼に「帰る前に一杯コーヒーを飲みに行かないか」と誘われた。
まだ夕方だったし、「良いね」と言って「どこの店にしようか?」と聞いた。
話すのが目的なのだと思ったし、その辺の近くの喫茶店かスタバあたりだと思ったのだ。
しかし彼は「実は行きたいお店があるんだ」と言う。喫茶店巡りが趣味だとも。

彼に着いていくととあるマンションの下に。Map上はこの辺りの筈だが、お店らしきものはない。。
と思ったその時、まさにその場所にそのお店があったのだ。
入り口は160cm程しかない扉と壁の境目が判らないようなもの。

入るとそこは異空間だった。ほぼ真っ暗に近い店内。
僕が想像していた珈琲屋さんとは懸け離れたものだった。

頼んだ珈琲が運ばれてきて、一口目を味わった瞬間、僕は理解した。
これまで知らなかった世界があったのだと。

僕がギターという楽器に魅せられて以降、僕が演奏者として一生懸命になれた理由は聴衆にこの言葉を言ってもらいたかったからだった。
「これまで知らなかった世界があったのだと」

ジャンルは違えど求めていたものがそこにあったような気がしたのです。
美味しい珈琲は今まで沢山頂いたのだけれども、この日の感覚はこれまで味わった事のなかったもの。

僕のギターもそうなっていきますように。
フィクションのような本当の話でした。

今年は初めて福岡・中洲ジャズに出演します。9/15(土)19時ブルックリンパーラーです。
そしてそのあと、9/30 – 11/3 までナミヒラアユコと共に、- 燈 Tomoshibi Tour 2018 – です。


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